J-PPMIとは

ご挨拶

 J-PPMI(パーキンソン病発症予防のための運動症状発症前バイオマーカーの特定研究)のHPにようこそ。この研究の代表者をしております、国立精神・神経医療研究センターの村田美穂と申します。

 パーキンソン病という病気をご存知でしょうか。脳の黒質という部分の神経細胞(ドパミン細胞)が障害され、手が震えたり動きがゆっくりになったり、歩きにくくなったりする病気です。パーキンソン病は年齢とともに発病率が上がり、日本では70歳以上では1%(つまり100人に1人)の患者さんがいるといわれ、欧米では65歳以上で1%といわれており、今後も人口の高齢化に伴い、増加の一途をたどると考えられており、決して珍しい病気ではありません。最近は多くの薬剤により症状はかなり改善されています。しかし、完全に治ってしまってもう薬はいらないという治療はまだありません。

 私たちはこの細胞の障害をなおす治療を目指していますが、一つ大きな問題があります。震えや歩きにくいなどパーキンソン病の症状が出た時点ではすでにドパミン細胞は60-70%に減っているために、細胞の障害を遅らせたり、止めたりするためには、もっと早い時期に対応する必要があるのです。そこで、パーキンソン病が発症する前に発症するかもしれない人をどのように探すか、ということが精力的に研究され、そのなかで、REM睡眠行動異常症(RBD)の方は、パーキンソン病やその関連の病気になる確率が他の人よりも高いということがわかってきました。RBDの診断後10年間で80%程度の方がパーキンソン病等の病気になるという報告もあります。 一方で、当然ですが、RBDであっても、パーキンソン病などにならない方もおられます。数年以内にパーキンソン病が発症するかどうか、つまり、ドパミン細胞の障害が始まっているかどうかは、ドパミントランスポータースペクト(DAT SPECT)という画像検査で分かるようになってきました。そこでRBDの方にこのスペクト検査(DAT SPECT)をして、診察や採血などをしながら経過を観察することで、パーキンソン病が発症する直前から、発症してくるときに起こってくる変化や、発症しない人と発症する人の違いを見つけることができる可能性があります。血液などの成分や画像の検査、心理検査などで、パーキンソン病などが発症してくるときの変化を見つけることは、発症させない薬や、発症した人への薬の開発に役立つばかりでなく、現在開発が進んでいる発症を予防する、あるいは遅らせる薬の評価に役立ちます。現在は実験室の中で発症を予防するかもしれないというデータが得られても、実際に患者さんに役に立つかどうかを評価する手段がないために、薬にできないという部分もあるのです。

 このようなことから、私たちは、この研究を日本で始めることにしました。実は同様の研究が米国PPMI(Parkinson’s Progressive Markers Initiative)の一部として行われています。病気のなりやすさは民族による違いも大きいとされているので、やはり我が国独自のデータが必要ですし、一方で海外と連携して研究を進めることも重要なので、米国PPMIと相談の上、緩やかな連携を取るということで、日本版PPMIとして、略称J-PPMIを使っています。

 次に、J-PPMI研究の実際の内容をご説明いたします。

概要

 J-PPMI研究(パーキンソン病発症予防のための運動症状発症前バイオマーカーの特定研究)

 REM睡眠行動異常症(RBD)の患者さんにご協力いただいております。60歳以上のRBDの方にドパミントランスポータースペクト(DAT SPECT) とともに、MRIやMIBG心筋シンチグラム(パーキンソン病などで異常所見がみられることが知られています)、心理検査やアンケートのほか、採血、採尿、脳脊髄液採取などをさせていただきます。

 診察と、簡単なアンケート調査、採血、採尿は半年に1回、その他は1年に1回検査をし、その間に3か月に1回程度電話でご様子を伺わせていただきます。

 この研究は、2014年度から始まり(患者さんの登録は2015年4月から)まず2019年度まで行い、その後も5年間継続となる予定です。この研究の期間中にもしパーキンソン病などを発症された場合には、この研究への参加は終了し、通常の診療を行います。

 この研究で決められた検査・診察などはすべて研究として行われますので、特別な費用はかかりません。一方で、検査のためにお時間をいただきますので、所定の負担軽減費を研究費から支払わせていただきます。なお、この研究期間中でも所定の検査以外に保険診療が必要となった場合には、保険診療で行わせていただきます。

研究体制

実施場所

 この研究の実施施設と各施設の研究責任者は以下の通りです。

  国立精神・神経医療研究センター病院 院長 村田美穂

順天堂大学医学部附属順天堂医院 脳神経内科教授 服部信孝

京都大学医学部附属病院 神経内科教授 高橋良輔

大阪大学医学部附属病院 神経内科教授 望月秀樹

名古屋大学医学部附属病院 脳とこころの研究センター特任教授 神経内科 渡辺宏久

なお、現在、国立精神・神経医療研究センターはすでに研究を開始しております。

 他の施設は現在準備中で、順次開始する予定です。

 この研究にご参加いただくためには専門医によるREM睡眠行動異常症(RBD)の診断が必要です。それぞれの実施施設は睡眠専門医と連携で研究を行っております。

 本研究はパーキンソン病等の治癒を目指した治療開発のための基盤となる研究ですので、どうぞ、ご協力をお願いいたします。

 研究へのご参加についてのお問い合わせはJ-PPMI事務局(電話042-341-2712 内線3233、
E-mail:j-ppmi@ncnp.go.jp) にご連絡ください。

研究組織

主任研究者
村田美穂 (国立精神・神経医療研究センター病院神経内科)
研究推進委員
服部信孝 (順天堂大学医学部附属順天堂医院脳神経内科)
高橋良輔 (京都大学医学部付属病院神経内科)
臨床コア主任
村田美穂 (国立精神・神経医療研究センター病院神経内科)
心理評価主任
林 俊宏 (東京大学医学部附属病院神経内科)
睡眠コア主任
亀井雄一 (国立精神・神経医療研究センター病院睡眠科)
画像コア主任
松田博史 (国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター)
生化学コア主任
池内 健 (新潟大学脳研究所)
ITコア主任
松田博史 (国立精神・神経医療研究センター脳病態統合イメージングセンター)
統計解析主任
立森久照 (国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
臨床コア幹事
(研究全般を補佐する)
向井洋平 (国立精神・神経医療研究センター病院神経内科)

試料保管責任者

新潟大学脳研究所
池内 健
国立精神・神経医療研究センターメディカル・ゲノムセンター
後藤雄一

検査内容

診察・検査等予定表

(※クリックで画像を拡大します。)

画像検査

●ドパミントランスポータースペクト

 ドパミン神経の障害の有無や程度を見る検査です。

(正常)

(パーキンソン病)

 ドパミン神経は年齢とともに数が少なくなりますが、RBDの患者さんでは、他の同じ年齢の人よりも早くドパミン神経の数が少なくなってくる可能性がありますので、この研究ではこれを1年に1回ずつ調べます。実際には、123I-イオフルパンというお薬を注射し、3時間後に頭の写真をとります。この検査はすでにパーキンソン病などの診断のために厚生労働省で認可され、世界中で使われています。

●MIBGシンチグラフィー

 心臓交感神経の機能を調べる検査です。RBDの患者さんではこの検査に異常が出ることが多いことが知られています。

(正常)

(パーキンソン病)

 異常であっても、心臓が悪いのではないかとご心配なさる必要はありませんので、ご安心ください。RBDの患者さんでもこの検査が正常の人と異常の人がおり、その違いでパーキンソン病などへのなりやすさが異なる可能性があるのでその点を明らかにするために、この検査をいたします。まず最初のベースラインの検査を行い、異常であれば、以後はこの検査はいたしません。正常の場合は、毎年1回異常になるまで行います。

 実際には123I- MIBGというお薬を注射し、注射直後と3時間後の2回、胸の写真をとります。この検査はすでに厚生労働省で認可され、世界中で使われています。

髄液検査

 中枢神経(脳や脊髄)の周りは、髄液という透明な液体で満たされています。成人では髄液の量は約150mlですが、1日あたり約500mlの髄液が作られ、常に新しいものと入れ替わっています。

 神経の病気では髄液の成分が変化することがあるため、髄液を採取して調べることは医療現場で一般的な検査として行われています。パーキンソン病の早期診断に役立つ物質が見つかる可能性があり、J-PPMIでも髄液を採取しています。

 具体的な方法としては、背中の腰のあたりに細い針を刺して髄液を12ml程度採取します(針を刺す部位には、事前に麻酔を行います)。

 副作用として、腰椎穿刺後に頭痛が生じることがあります。J-PPMIではこの頭痛を予防するため、腰椎穿刺後に十分な水分摂取ならびに1時間の安静臥床をしていただいています。

心理検査

 J-PPMI研究では、神経心理学的評価および認知評価を実施しています。
検査は、多肢選択法で構成されている質問形式と実際に紙や鉛筆を使用し取り組む検査からなります。ビジット毎に実施する検査は決まっており、所要時間は、大体1時間程度です。

 評価領域は多岐にわたっており、睡眠関連、自律神経機能、身体的な活動レベル、気分、学習・記憶、視空間認知、作動記憶、処理速度などがあります。質問形式の大まかな内容としては、睡眠行動(日中の眠気など)に関すること、消化管機能、排尿機能、心機能に関すること、日常生活で行う運動の内容や頻度、不安や抑うつ状態の評価などがあります。実際に取り組んでいただく検査では、言葉に関する問題、図形の模写、線の角度関係を測る問題などが含まれます。

 最後ですが、質問や問題となりますと、何を聞かれるのだろう、難しいのかなと緊張したり、不安を感じたりすることもあるかもしれません。アンケートや問診表を少し詳しくしたバージョンのようなものですので、気負わずに自然体で受けていただければと思います。

 参加者の皆様に心地よく受けていただけるよう努めてまいります。 皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。

ご興味をお持ちの方へ

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1.研究の目的

 REM睡眠行動異常症(RBD)の患者様は、長い経過のなかでパーキンソン病などを発症するリスクが高いことが最近分かってきました。パーキンソン病とは脳の黒質という部分のドパミン細胞が少しずつ減り、手足がふるえたり、動きがゆっくりになったりする病気です。パーキンソン病の治療は非常に進歩してきていますが、残念ながらまだ根治するには至っておりません。様々な研究を通じてパーキンソン病の治療には、症状がはっきりと出てくる前の段階で治療を開始することが重要ではないか、と考えられるようになりました。パーキンソン病になるかもしれないリスクを持っているが、まだパーキンソン病になっていない方がどのような経過をとるのかを明らかにすることが、パーキンソン病の根治治療を考えるうえで極めて重要と考えられています。

 そこでRBDの患者様を対象に、定期的に診察や様々な検査をして経過を観察する研究(J-PPMI)を始めました。参加した患者様のうち何名かはパーキンソン病を発症すると予想され、パーキンソン病発症前後にどのような変化が患者様の体内で生じているのかを知ることができます。この研究から得られた知見は、将来のパーキンソン病診療の進歩につながります。

2.研究の方法

 ドパミントランスポーター(DAT) SPECTという検査で脳のドパミン細胞がどれだけ減っているかを調べることができます。60歳以上のRBDの患者様にDAT SPECTを行い、ドパミン細胞が減っている100名とドパミン細胞が減っていない100名を対象として、定期的に診察や検査を行い、パーキンソン病などの初期症状が出ていないかどうかを観察します。もちろん全員が発症するわけではありません。

 具体的には4年間、半年に1回ずつ、国立精神・神経医療研究センター病院(NCNP)神経内科外来を受診していただきます。この間に3か月おきの電話による簡単な問診もあります。

 神経内科外来受診時には、神経学的診察、心理評価、血液検査を毎回行います。DAT SPECT、脳MRI、認知機能検査、髄液検査は1年に1回行います。また、MIBG心筋シンチは初回評価時に行い、もし正常であった場合には低下を確認するまで年に1回行います。

 本研究はNCNP、順天堂大学、京都大学、大阪大学、名古屋大学で協力して行う多施設共同研究ですが、個人を特定できる個人情報が他施設に漏れることはありません。

 診察や検査等の費用は研究費で賄うため、患者様の費用負担はありません。

 なお、研究ご協力へのお礼として薄謝を進呈させていただきます。

 診察や検査の結果を知りたくない患者様は、研究に参加しても結果をお知らせしないという選択も可能です。

 なお経過中にパーキンソン病等を発症された場合は、本研究参加は中止になり、その後は通常の保険診療になります。ご希望によりNCNP神経内科で責任をもって治療をさせていただきます。

 本研究にご興味のあるRBD患者さんはJ-PPMI事務局にお問い合わせください。

※研究に関すること以外(治療や施設の紹介等)のお問い合わせにはお答えしておりません。